高齢者職権消除
認定死亡に類似した制度として高齢者職権消除というのがあります。所在不明の高齢者などで、明らかに生きているとは思われないような場合に、行政が職権で死亡した旨を戸籍に取り扱う運用の事です(戸籍法44条3項・24条2項)。
除籍の身分事項欄に、「年月日時および場所不詳死亡昭和○○年○○月○○日附許可を得て同月○○日除籍」などと記載されます。
認定死亡と類似しますが、認定死亡は相続開始原因たる死亡に該当されるのに対して、高齢者職権消除は単に戸籍行政上の便宜にもとづくものであって死亡の法的効果は生じません。
したがって、死亡の効果を発生させるためには認定死亡か失踪宣告の手続をとる必要があります。
松山家裁昭和42年4月19日決定・家庭裁判月報19巻11号117頁
同決定は、高齢者職権消除を相続開始原因である死亡に当たらないとしています。
「本件記録編綴の同人の除籍謄本には、その、身分事項欄に、『年月日時および場所不詳死亡昭和27年11月6日附許可を得て同月10日除籍』なる旨の記載があり、その記載は、~によれば、被相続人Aの戸籍消除事由は、大正5年2月3日民事第1、836号司法省法務局長回答、昭和6年2月12日民事第1、370号司法省民事局長回答、昭和24年9月17日民事甲第2、095号法務省民事局長回答等の先例に、いわゆる高齢者職権消除に基づくものであることが認められる。しかし、上記行政通達を根拠として、被相続人Aの戸籍に死亡の記載がなされても、それは単に戸籍行政上の便宜にもとづくものであつて、失踪宣告の如き法的効果を生ずるものでないことは、いうまでもない。したがつて、被相続人Aの死亡の事実または失踪宣告の審判のなされたことについて、何等の資料がない本件においては、同人の死亡による相続を前提として相続財産管理人の選任をすることはできないものといわなければならない。」