相続人でない者を含めてされた遺産分割の効力
相続人でない者を含めて遺産分割が行われてしまうことがあります。この場合、当該遺産分割の効力はどうなるのでしょうか?
例えば、嫡出否認、婚姻無効の確認、親子関係不存在確認の訴えが提起されていたり、家庭裁判所に廃除の請求がされていたにもかかわらず遺産分割が行われ、その後、嫡出性が否認されたり、婚姻無効が確定したり、廃除の審判が確定した場合です。
このような相続人でない者を含めて遺産分割をした場合、①遺産分割の効力は無効とする見解と、②相続人でないとされた者に対する分割は無効となり原則としてその者に分割された財産を再分割すれば足りるが、全体として公平な分割にならないような特別の事情があれば分割をやり直すとする見解があります。
大阪地裁平成18年5月15日判決・判例タイムズ1234号162頁
同判決は上記②の見解を採用しています。
「共同相続人でない者が参加して遺産分割協議が行われた場合であっても、共同相続人の全員が参加して当該協議が行われたものと認められる以上、直ちに当該協議の全部について瑕疵があるということはできないのであって、むしろ、共同相続人でない者に分配された相続財産のみを未分割の財産として再分割すれば足りるとするのが、当該協議に参加した者の通常の意思に合致するとみられ、また、法律関係の安定性や取引安全の保護の観点からすると、いったん遺産分割協議が成立し、これを前提とする相続財産の処分等がされた後に当該協議の効力を常に全面的に否定することは、できる限り避けるのが相当である。
これらのことを考慮すると、共同相続人でない者が参加して行われた遺産分割協議は、原則として、当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となるのであり、ただ、当該共同相続人でない者が取得するとされた財産の種類や重要性、当該財産が遺産全体の中で占める割合その他諸般の事情を考慮して、当該共同相続人でない者が協議に参加しなかったとすれば、当該協議の内容が大きく異なっていたであろうと認められる場合など、当該共同相続人でない者の遺産取得に係る部分に限って無効となると解するときは著しく不当な結果を招き、正義に反する結果となる場合には、当該遺産分割協議の全部が無効となると解するのが相当である。」