後継ぎ遺贈の問題
後継ぎ遺贈とは、遺言の効力が発生した後に受遺者Bが死亡しても、その受遺者の相続人に遺贈の目的物を相続させるのではなく、被相続人Aの指定する者Cに遺贈の目的物を与えるという遺贈です。
例えば、「不動産を配偶者であるBに譲る。Bが死亡した後、当該不動産をCに譲る。」というものです。
後継ぎ遺贈はその有効性について争いがありましたが、最高裁昭和58年3月18日判決が判断しています。
最高裁昭和58年3月18日判決・判例タイムズ496号80頁
「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
「右遺言書の記載によれば、Aの真意とするところは、第一次遺贈の条項はBに対する単純遺贈であって、第二次遺贈の条項はAの単なる希望を述べたにすぎないと解する余地もないではないが、本件遺言書によるBに対する遺贈につき遺贈の目的の一部である本件不動産の所有権をCらに対して移転すべき債務をBに負担させた負担付遺贈であると解するか、また、Cらに対しては、B死亡時に本件不動産の所有権がBに存するときには、その時点において本件不動産の所有権がCらに移転するとの趣旨の遺贈であると解するか、更には、Bは遺贈された本件不動産の処分を禁止され実質上は本件不動産に対する使用収益権を付与されたにすぎず、Cらに対するBの死亡を不確定期限とする遺贈であると解するか、の各余地も十分にありうるのである。」
後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
最高裁昭和58年3月18日判決は、後継ぎ遺贈の効力につき明確には判断していませんが、一般的には無効と解されています。
このような中、2006年(平成18年)の信託法改正により、受益者連続信託を用いることにより、財産の引継ぎを数次にわたって決定することが可能になりました(信託法91条)。