特別縁故者として財産を分与されましたが税金を納める必要があるのでしょうか?
特別縁故者に対する課税
特別縁故者に対する分与によって財産を取得した者は、当該取得財産を遺贈によって取得したものとみなされ(相続税法4条)、相続税が課税されます。
ただし、基礎控除が3000万円ありますので、これを超えない限り課税されることはありません。
特別縁故者に対する相続税の計算
⑴ 財産評価の基準時
相続人に課税される相続税の計算の基礎となる遺産の評価は相続開始の時の時価によります(相続税法22条)。これに対し、分与を受けた特別縁故者に課税される相続税の計算の基礎となる相続財産の評価は、分与の審判があったときの時価です(相続税法4条)。
裁判所が特別縁故者に対する分与の決定を下すまでに時間を要しますので、特別縁故者が財産の分与を受けることが確定する時点では、相続開始から長期間が経過し、財産の評価額が大きく変動していることがあり得ますが、この場合でも分与の審判があったときとなります(大阪高判昭和59・11・13訟務月報31巻7号1692頁)。
⑵ 適用される相続税法の基準時
適用法令については、特別縁故者として財産の分与を受けたときではなく、相続開始時の相続税法が適用されるとされています(神戸地判昭和58・11・14行集34巻11号1947頁)。その結果、相続財産評価の基準時と、適用される法令の基準時にズレが生じることがあります。
⑶ 申告期限
特別縁故者の申告期限は分与の審判があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です(相続税法29条1項)。
⑷ 基礎控除
特別縁故者に対する基礎控除額は法定相続人が零の場合として3000万円です(相続税法15条)。
基礎控除の額は審判時ではなく相続開始時の相続税法によります。相続開始から審判時までに相続税法が改正されて基礎控除額や税率などが変更されている場合でも、分与を受けた者はその影響を受けません(大阪高判昭和59・7・6判タ538号118頁)。
⑸ 税額加算
1親等の血族や配偶者以外の者が遺贈により財産を取得した場合ですから、税額は2割加算となります(相続税法18条)。
⑹ 債務控除
相続財産の分与を受けた者が、被相続人の葬式費用や療養看護のための入院費用等で、相続開始の際に支払われていないものを負担した場合は、これらの債務は分与を受けた金額から控除することができます(相続税法基本通達4-3))。ただし、相続財産清算人に債権者として届け出て、弁済を受けることができますので、まず弁済を求めるべきです。
なお、分与を受けるについて要した費用、つまり弁護士費用などですが、これは相続税の課税において差し引くことはできません。
⑺ 生前贈与の取扱い
特別縁故者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた場合には、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に算入することになります(相続税法19条)。
(弁護士 井上元)